☆☆☆平成23年度松陵会総会講演会☆☆☆
元日本インター「株」社長、現ナナエンジニアリング梶@上級顧問
石井政夫様(昭和39年卒 電気科)講演要旨

元日本インター「株」社長、現ナナエンジニアリング梶@上級顧問
石井政夫様(昭和39年卒 電気科)講演要旨

 石井政夫様は、昭和39年に電気科を卒業後、安立電気(現アンリツ)に入社、ほぼ1年で退社して、東海大学工学部電子工学科を昭和44年に卒業しました。卒業後に日本インターナショナル整流器梶i現日本インター梶jに入社され、平成14年に常務執行役員営業本部長、平成19年4月に代表取締役社長に就任、平成22年6月に代表取締役社長を退任されました。その後、ナナエンジニアリング鰹繼煙レ問として現在に至っています。

−景気のサイクルと将来ビジネス−

 ただいまご紹介を頂きました石井政夫です。昭和39年に電気科を卒業しました。私の職務経験から「景気のサイクルと将来ビジネス」と題してお話しをする機会を与えて下さいましてありがとうございます。昭和63年頃、バブル景気の真っ只中、名古屋転勤から戻りました時、現松陵会の林会長(同級生)にお会いした折に誘われ平高で景気の話をした記憶がございます。その後また景気の話を皆様にして頂きたいと言われましたが、それから忙しく海外を飛び回ったりしておりまして、その機会がございませんでした。昨年、日本インター鰍フ代表取締役社長を退任し、時間的に若干の余裕ができましたので、同窓会に参加する機会に恵まれました。

 これからは私の40年間の体験に基づいてのお話です。場所や状況により、大きな研究所などの調査結果あるいは他の人の考え方と異なることもあります。私の狭い分野での体験として捉えて下さい。私は伊勢原で生まれ、平高を卒業後、アンリツを退社して東海大学から日本インターへ、東京から名古屋へ、いろいろと変化にとんだ生き方をしてきた。名古屋では自動車のモーターコントローラやNC工作機を扱った。サイリスターの売り込みであった。東京に戻り世界も駆け巡った。当時と今とは様々な形態が変化してきています。今は景気が悪いというが、景気は変化する。過去も苦しい中を生き抜いてきた。

 景気にはサイクルがある。東北の大震災は需要調整型の景気サイクルに大きく影響した。年間の景気サイクルを考えると、クリスマス商戦は1〜3月が新製品の立ち上げ時期、これが東北の大震災でモノの供給が止まった。この遅れで新製品の機能が変わり、価格にも影響した。大手の顧客や生産各社が厳しい状況に置かれた。新製品の立ち上げ後、4月〜8月までが生産のフル稼働、9〜10月頃に船積みをする。これが年間の景気サイクルである。半導体ではシリコンサイクルがある。ほぼ4年周期、オリンピック需要とも呼ばれる。最近では、ワールドカップの影響もあり、シリコンサイクルは消滅したとの話もある。これは韓国メーカーがDRAMを牛耳っていたからである。しかし、オリンピック需要はまだ存在する。北京オリンピックが終わると、すぐにリーマンショックがあった。

2つの景気のサイクル

1.需要調整型の景気のサイクル(設備投資に影響)
  ・年間のサイクル−クリスマス商戦(1−3月が新製品の立ち上げ、9−10月船積み)
             −近年は中華の旧正月商戦(1−2月の旧正月に向け生産)
             −日本では卒業、入学商戦
  ・シリコンサイクル−オリンピック需要(4年1回の需要)
             −最近はワールドカップサッカーも影響

2.大不況(バブル)による景気のサイクル
  過去40年に4回。石油ショック(ドルショック)、住宅バブル、ITバブル、金融バブル
  ・バブルはほぼ10年に1回発生している。
  ・バブルは人間の欲望が引き出すもので、需要調整型ではない。
  ・バブルは新しい産業を生み出すと同時に飽和した産業を切り捨てる。
  ・バブルは新規参入をする企業が生まれると同時に淘汰される企業がある。
  ・バブルには底がない。今回は前年比70%以上の落ち込みがあった。
  ・バブルの需要状況は約1年の底と急激な立ち上がりを持つ。
  ・バブルの対策は次の産業に乗り遅れないことと財務対策に尽きる。
  ・バブルに対応するにはその前の10年間に次の産業の種がある。
  ・バブルはピンチであるが大きなチャンスでもある。

 今は東北の大震災もあって不況ではあるが、グローバルビジネスは、2020年頃までに、次第に回復すると予測される。景気には大きなサイクルがある。過去40年間で4回、大不況を経験した。石油ショック、住宅バブル、ITバブル、金融バブルである。バブルはほぼ10年に1回発生している。石油ショックは洗剤やトイレットペーパーが店から無くなった。当時、石油は20年で枯渇すると言われた。20年経過しても石油は枯渇していない。現在、石油はあと50年持つと言われている。天然ガスは60年持つという。真実は不明である。バブルは人間の欲望が引き出すもの、需要調整型(投資)ではない。経営者の任期は3年から長くて6年、バブルは10年周期、この間、経営者は2〜3人が変わる。中には、積極的に投資する経営者も出てくる。銀行との債務や株式との関係もある。経営者が変わると、過去を忘れる人もいる。いっせいにアクセルを踏み込み過ぎると、バブルが発生し、経営が苦しくなる。

 大不況はほぼ10年周期、不況がかならずしも悪い側面だけを持っているわけではない。過去の大不況時の後には必ず新しい産業が生み出されてきた。つまり、新規参入業者が存在し、同時に淘汰される企業がある。大きな景気のサイクルにより、勝者が敗者になり、敗者が勝者になる。バブルはピンチであるが、大きなチャンスでもある。産業構造を見ると、テレビの場合、最初は白黒テレビ。次の10年でテレビは白黒からカラーになった。石油ショック前後の頃であった。白黒で大きなシェアを持つ企業が敗者になった例もある。このことはカラーテレビに限らない。東京に戻り、営業部長の時、社内ではカラーテレビの次に来るモノ、プラズマTVが面白いということで目を付けた。ダイオードが使われるので、それを拡張した。それが次の住宅バブルの後に役に立った。フラット型のPDPの中にダイオードが140個も入っている。そこで世界70%のシェアを獲得した。次のバブル後になると、プラズマから液晶TVになり、プラズマ用ダイオードの設備が使えなくなった。新工場が必要ということで、筑波に工場を建て生産している。デジタル化である。

景気のサイクルは産業構造を変える

過去3回の不況でどのように変わってきたか
1.オーディオ
  オーディオセット(レコード)⇒コンポ(テープ)⇒ウォークマン(CD)⇒IPAD
2.テレビ
  白黒⇒カラー⇒フラット(PDP等)⇒液晶
3.コンピュータ
  メインフレーム⇒ミニコン⇒ディスクトップ型パソコン⇒ノートパソコン
4.通信
  卓上電話⇒自動車電話など⇒携帯電話(PHS)⇒スマートホン
5.カメラ
  36mmカメラ⇒小型カメラ(使い捨て)⇒デジタルカメラ⇒携帯、デジカメ一体(画素数アップ)
6.工作機
  旋盤等機械式⇒NC工作機⇒マシンニングセンター⇒ロボット

 ・あらゆる産業がバブルを境に生まれて、消えてゆく。
 ・人間の欲望は、軽量化、薄型化、短縮化、小型化、価値観である。
 ・最終の欲望に行き着くところは複合化でそれも飽きると、その産業は衰退する。

 この産業の変化が繰り返され、勝者は次の時代には敗者になる。このようにして、チャンスがピンチになり、ピンチがチャンスとなって、企業が淘汰される。景気のサイクルが産業構造を変える。先ほどの話によると、生徒は大きな会社に入りたいという。大きな会社でも産業構造の変化についていけなければ敗者になる。松陵会の林会長が好きなオーディオ、会社に入った頃、私の3畳1間の部屋に大きなオーディオセットがあった。夢の世界だった。それが石油ショックの後、小さなコンポが普及した。あっという間だった。騙されたと思った。その後ウォークマン、IPADです。不況の後に産業構造が変化する。建築業もサービス業も同じだ。会社に入社した頃、何処に行ってもキャバレーがあった。石油ショック後、接待費が使えなくなり、クラブやスナックの時代へ、さらにカラオケが普及した。今もクラブやスナックは続いているが、その中味はグローバル化、最初に韓国勢、次に中国、台湾、フィリピン、ロシア、最終的にはどこの国か判明できなくなった。新宿には国際通りが生まれた。外国人を相手にするのでなく、外国人が飲み屋を経営する。このように産業構造は景気を境に変化する。

 産業の変化のキーワードは、軽量化、薄型、短縮、小型、などである。コンピューでは、大きな部屋に設置されていたメインフレームがミニコンになり、ディスクトップ型パソコンからノート型パソコンが普及した。そしてIPADや携帯電話など、音と映像や通信が一緒になり、小型化される。現在の優良会社は将来も良い会社ではない。就職するなら将来に優良になる会社を探しなさいということだ。

 将来ビジネス、これからの産業である。今回の話があったのは震災前、震災の影響を少し加えた。震災の影響と今後の復興も産業構造の変化に関連する。CO削減について、日本は2020年までにCO削減25%を海外に示した。先日、欧州から、原発事故の影響で、2025年までに延長したらという提案もあった。原子力発電は、クリーンエネルギーとも関連するが、コストが安いという。そうではないということも分かってきた。コスト計算に原子力発電所の耐用年数が考慮されていない。未解決の使用済核燃料の処置や青森の六ヶ所村が稼動できないなど、政策上の問題がある。日本人は自己完結型の性格を持つ。電気について、電力会社だけに、頼ることができなくなる。ソーラーハウスなどが必要と自己防衛を考える。ということで、次の世代のあらたな人材、成長エネルギーが生まれる。グローバル化の影響も無視できない。部品業者が次々と海外に転出している。

これからの産業

この不況とそれに続く震災によって、大きく産業構造が変わる。
1.2020年までにCO削減25%は日本政府が海外に示したこと。
2.今回の原発事故は日本のエネルギー政策を変えていく。
3.日本人は自己完結型の性格のため、電気に関して自己防御を考える。
4.あらゆる事で次の不況までに、あらたな人材、成長エネルギーが生まれる。
5.グローバルの影響がますます大きくなる。

以上のことより
1.あらゆる規制緩和が進む。
2.日本を含め、新しいエネルギー政策が生まれ、電力構造に変化が生じる。
3.ソーラー、風力、地熱、天然ガスなどのエネルギー利用が進む。
4.PC、テレビ、携帯電話を含めた複合化、小型化が進む。

私が提唱していること
 クリーンエネルギーのソーラー等を使い、家庭や事業所の電力を賄い、HV(ハイブリッドカー)、EV(電気自動車)を充電し、系統電源に電気を貫流する。電池システムを装備し、HV、EVは発電機としても使う。全体の電力は効率よく使うため、スマートグリッドシステムで管理する。
 行き着く先はDC(直流)給電である。モーター以外はすでにDCで動いていて、わざわざDC(直流)からAC(交流)に変換し、アダプターでDC給電することによる電力効率を悪くする必要がない。

 以上のことから、あらゆる規制緩和が進む。まず、電気事業法だが、新エネルギー法が生まれる。政府に任せておけないものもある。地方自治体がまとまってしっかりとしなければならない。特に、規制緩和が必要である。日本は税金が高い。アメリカは努力して安くすると、税金が安くなる仕組みがある。アメリカにも停電(計画配電と呼ばれる)はあるが、そのようなことをする企業は市場から抹殺される。2ケ月もせずに事務所が消える。そのため何としても事業を継続しなければならない。ソーラー、風力、天然ガスなどの利用も進む。震災前に沖縄にある急速充電の仕組みを見学した。普通充電は自治体が主体、急速充電はファミリーマートが行っていた。そこには事業法の問題もある。パソコン、テレビ、携帯電話などの複合化と小型化は先ほどの話の通りである。

 最後に、新エネルギーシステムモデル、社長時代に考えたモデルだが、いま真剣に取り組んでいる。ここにいろいろなモジュールや部品が使われるようになる。太陽光電池モジュールは地熱でも風力でもよく、接続器を介して、東京電力などの系統電力と結ばれ、全体をスマートグリッドで管理する。ソーラーや風力など、周波数や電圧の問題もあるが、急速充電器を介して、直流で電気自動車などに電力を供給する。スマートグリッドとは、デジタル機器による通信能力や演算能力を活用して電力需給を自律的に調整する機能を持たせ、省エネとコスト削減及び信頼性と透明性の向上を目指した新しい電力網である。最初にアメリカの電力事業者が考案し、自律分散的な制御方式も取り入れている。東海大学では、自分たちでソフトウェアを開発して研究している。電気自動車にはいろいろな仕組みが組み込まれ、各機器を組み立てソフトでコントロールしている。地産地消が基本となる。


 大切なのはコンバージョン、コンバージョンの意味だが、自動車の場合、いま約9億台の車が走っている。これが排ガスを出している。電気自動車に置き換える場合、自動車メーカーは新車を購入してというが、従来のバスや自動車をコンバージョンして電気自動車にできる。このビジネスも無視できない。何故に地産地消なのか、子ども達、次世代のために、産業を興して、これを活性化させる。これが日本に残された最後の産業の仕組みと考えた。その地域だけでできることに対して、それぞれの地域で産業を育て収益を上げる。とはいえ、いろいろな問題がある。電気事業法もあり、急速充電器の設置、日本の車検などがある。中国では2千万台の電動オートバイが走っている。僅か1時間でガソリンタンクを外し、電動オートバイにする。そして、そのまま走っていってしまう。この様なビジネスを日本でしっかりと定着させることがこれからの時代に大切である。このビジネスは、電気だとか、化学だとか、機械だとか、関係なく、すべてが入っている。昭和40年代の頃、石油ショックの前、自動車で電気を使っていたのは時計だけ、ほとんどが電気化(電子化)されていなかった。その後、エアコンが普及し、パワーウィンドウやパワーステアリングなどに電気が使われ、いまや唯一電気化されていない自動車のエンジンが電気に置き換わろうとしている。少しばかり時間をオーバーしましたが、震災を乗り越えて、元気のある人が次の世代のために頑張ってほしいとの願いを込めて話を終わりにします。長時間ありがとうございました。

(補足)為替の話:株も為替も景気にリンクする。日本の場合、日銀が為替を管理(介入)している。アメリカでは、政府が直接関与する。その時の大統領は為替を有利にすると言われている。大統領選挙前は円高、1月の一般教書が終わると、円安になる。年間では、3月の決算期になると、為替は上がる。私がいた会社では、1ドル上がると、月に4〜5百万円、年間では約5千万円が利益に影響する。4月になると、円安になる。為替は操作されている。株価も同じような動きが見られる。この不況で株価は下がっている。

(文責:高橋豊)

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